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コラム

業績アップが約束される「心の方程式」

[連載] 第1回「なぜ実力を発揮できないのか?」
取締役COO 布施 努

プロスポーツの世界では、一流選手であっても思い通りに実力を発揮できないことがある。わずか30cmのパットを外し、点を仰ぐプロゴルファーたちの姿を私たちは何度もみてきたはずだ。一方では、実力を発揮し、期待通り、あるいは実力どおりの結果を出す選手もいる。北京オリンピックで言えば、北島康介選手がそのよい例だろう。

実力を発揮できる選手とできない選手とでは、何が違うのか。
大きな要因として、当人の「心理」が挙げられる。つまり、どういう心理状態で舞台に立ったのか。ここに着目し、選手の心理とパフォーマンスの関係を考える学問が応用スポーツ心理学だ。また、心理的アプローチから考察し、選手の最高のパフォーマンスができる状態(パフォーマンスエクセレンス)に導くことが、メンタルパフォーマンスコーディネーターの役割である。

企業経営でも、スポーツシーンと同じこと(実力を発揮できたり、できなかったり)が起きる。
優秀な営業マンがなぜか結果に恵まれない。
綿密に練ったプロジェクトがなぜか上手く機能しない。
といったケースは、誰にでも聞き覚えがあるだろう。その背景にも、やはり心理状態が影響している。この連載では、心理面から経営にアプローチし、パフォーマンスエクセレンスな状態へ導く方法を検証していきたい。

第1回目では、心理と経営のパフォーマンスの基本的な関係について考えてみることにしよう。
まず踏まえておきたいのが、「心・技・体」が整わなければ、100%の力は発揮できないということだ。

優秀な営業マンを例に考えてみよう。
彼は営業術、経験、知識といった「技」の部分で優れている。しかし、例えば、体を崩す時がある。すると、100%の力を発揮することができなくなる。
また、ストレスなどにより、心、つまり精神状態が乱れることもある。この場合にも、100%の力は出ない。長期的には、「体」(=体調)が管理でき、「心」(=精神状態)がコントロールできる人であっても、短期的、あるいは瞬間的には100%の力が発揮できなくなることがあるわけだ。

優秀な営業マンが本当に優秀であるかどうかは、実はこういうときに問われる。つまり、心に負担がかかっていた状態でも、100%の力を発揮できるかどうか。だから、パフォーマンスエクセレンスな状態に自分を持っていく術を知っておく必要があるのだ。
心理が影響するのは、個人のパフォーマンスだけに限らない。企業や部署、プロジェクトチームといった団体(組織)にも及ぶ。当然だろう、企業や部署も人の集まりである。集団を組成する個々のスタッフがパフォーマンスエクセレンスな状態になければ、彼にいくら「技」があっても、計画や戦略が秀逸であっても、実力通りのパフォーマンスは発揮されないのである。

パフォーマンスの大きさはセルフイメージに制限される

セルフイメージとパフォーマンスの関係

心理がパフォーマンスに作用する仕組みを分かりやすく説明するのが、「セルフイメージ」である。
セルフイメージはラニー・バッシャム氏が提唱するメンタル・マネジメント理論に基づく。彼は、モントリオールオリンピック、ライフル射撃の金メダリストであり、彼自身の経験と、数多くの選手を教えた経験、また、多くの心理学者や世界チャンピオンたちへのインタビューからたどりついたのが、この理論だ。

彼は言う。
『勝者とそれ以外を隔てるものは、たった一つ。「考え方」だけだ』

この「考え方」の重要な部分を担うのが、「セルフイメージ」である。
どういうものか。AとBという2つの円をイメージしてもらいたい。
Aの円は、自分のパフォーマンスの最大限の大きさ。つまり、「実力」だ。
もう一つのBの円は、当人の心理状態を表す。心配事がある時、弱気になっているときなどのBは小さく、逆に、自分の中で良いイメージ、成功しているイメージが描けている時は大きい。この円を「セルフイメージ」と呼ぶ。
ある物事に挑む時、AよりもBの円の方が小さかったとする。すると、パフォーマンスはB(=セルフイメージ)の大きさでしかアウトプットされない。セルフイメージが実力を制限するからである。

では、Bの円がAと同じ、またはA以上に大きかったらどうか。
この場合、パフォーマンスは実力通りAの大きさで発揮される。これが、経営者が目指すべき状態、あるいは、我々コンサルタントが導いていこうとしている状態だ。ここで求められているのは、従業員や部署(チーム)が大きなセルフイメージを描き、それを保てるよう配慮すること。また、瞬間的にセルフイメージが小さくなったとしても、すぐに大きくできるよう働きかけてやることだ。

ただし、仮にA < B(実力 < セルフイメージ)であっても、アウトプットはA(実力)の大きさ以上にはならない。スポーツや経営においては、実力以上の結果は出ないからだ。セルフイメージが非常に大きいにも関わらず、結果がイメージ通りにアウトプットされないという場合、それは「自信過剰」である。A(実力)がイメージするほど大きくないということだ。

また、100万円の売上げ目標に対し、120万円の売上げが得られた場合、多くの人が「120%の力が出た」と表現する。しかし、それは違う。もともと120万円分の実力があり、20万円分の「伸びしろ」があったにもかかわらず、これまで発揮できていなかったということだ。実力を100%発揮するということは、それくらい難しいことなのである。

職種別に見ると、アメリカでメンタルトレーニングプログラムを受けるのは、銀行や証券会社のトレーダー、パイロット、キャビンアテンダント、メーカーで開発や研究に携わる人など、ストレスの大きい仕事に就く人が多い。ゴルフ場のように人や自然を相手にする仕事も例外ではない。言い方を替えれば、こうした業種ほど、セルフイメージに着目することで最大限のパフォーマンスを引き出せる可能性は高い。
しかしここで、もう一つだけ踏まえておきたいことがある。それは、まず当事者に「結果を出したい」「パフォーマンスを向上させたい」「経営状態を変えたい」といった気持ちが絶対に必要であるということだ。心理学は、心理をベースにアプローチする。気持ちが伴っていなければ、プロセスを整えても効果は出ないのである。