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コラム

業績アップが約束される「心の方程式」

[連載] 第2回「なぜ一流はいつも謙虚なのか?」
取締役COO 布施 努

個人、チーム、企業が持つ実力をパフォーマンスとして十分に発揮する上では、心理状態がカギを握る。また、それぞれが成長を続けていく上でも心理状態が大きく影響する。

ところで、スポーツ選手のテレビインタビューなどを見ていて、一流と称される人ほど「謙虚」だと感じることはないだろうか。一流であるほど、あるいは、成長著しい選手ほど、優勝を飾っても「まだまだ勉強中です」と謙遜する。日本新記録を叩き出しても、「世界には、まだすばらしい選手がたくさんいますから」とコメントする。

「謙虚」というのも、心理状態のひとつだ。そこで今回は「謙虚」をキーワードに考えてみたい。

例えば、ある大学生のスポーツ選手がいるとしよう。彼には、3つのステップがある。まずは目の前にある大学選手権。そこで好成績を残した先には、国内大会があり、最終的な目標としてオリンピックという大舞台がある。

彼が最初に世間から注目されるのは、大学選手権を制した時だろう。その際、一流選手の素質を持つ彼は、おそらく「日本にはまだたくさんすばらしい選手がいます。私などまだまだです」と言う。

なぜ、彼は自分の成績を謙虚に捉えるのか。答えは簡単だ。彼がすでに、次の目標を見据えているからである。日本や世界という規模で見れば、まだ先は長い。だから、「まだまだです」というコメントが出る。つまり、視野が広く、視線は高い。その結果、自己評価は、周囲の評価よりも低くなる。それが見ている側にとっては謙虚に映るのである。

その後、国内大会で好成績を残した際にも、彼は謙虚であり続けるだろう。国内大会を制したら、オリンピックがある。オリンピックでメダルを獲ったとしても、今度はV2、V3という新たな目標に目を向ける。一流選手であるほど、ある目標に到達すると同時に、あるいは目指していた目標が届く範囲に来たときに、次の目標に目を向ける。決して立ち止まろうとしない姿勢が一流選手の成長を生み出すわけだ。

企業においても、同じ現象を見ることができる。

例えば、若くして課長に昇進した人がいる。周りは「すごい」と讃えるが、彼は「まだまだ」と謙遜する。なぜか。周りが「すごい」と讃える時にはもう、彼は既にその先にある部長の席を見ているからだ。部長という目標に比べれば、課長は通過点に過ぎない。だから、「まだまだ」という自己評価になる。1000万円売り上げた人や、100人の利用者からサービスを誉められた人も、彼が一流の素質を持っている場合は、謙遜するだろう。
「まだまだです(今は1500万円という目標を掲げていますので)」
「まだまだです(500人が褒めるサービスを提供したいので)」

いずれの場合も、すでに次の目標を見据えているため、謙遜な自己評価となるわけだ。
成長とは、こういう姿勢を維持した結果と言ってもいいだろう。

企業においても、成長を続ける一流は常に謙虚だ。
例えば、「地域ナンバー1のゴルフ場を目指す」という目標を立てたとする。目標達成のために各部署がすべきことをブレイクダウンし、コース管理部隊は最高のグリーンを作りに励み、営業部隊は来場者を増やす戦略を練る。フロントやレストランなどのサービス部隊は接客術を磨く。結果、まずはコース管理部隊が結果を出し、「あそこのグリーンは地域ナンバー1だ」と評されるようになった。しかし、この時点ではまだ、売り上げやサービスでは地域ナンバー1に達していない。

最初のポイントはここだ。
「地域ナンバー1のグリーン」という評価に喜び、そこで目標達成とするか。あるいは、「まだまだ」と考え、その他の部分にも力を入れて総合的な地域ナンバー1を目指すのか。当然、後者の方がその先に大きな成長を期待できる。

では、ついに地域ナンバー1のゴルフ場になったとする。ここで再び、謙虚さが問われる。地域ナンバー1で満足することもできるし、県、地方、日本のナンバー1といった、さらに大きな目標と比較し、「まだまだ」と考えることもできる。

心理とパフォーマンスの関係では、目標に向かって取り組んでいるときの心理も重要だが、さらなる成長を見据えるという点で言えば、目標を達成した時の心理の方が重要なのである。

目標設定は外発と内発の両面から

組織経営において、「まだまだだ。次のステップに向かおう」と判断するのは、経営者やリーダーの役目である。地域ナンバー1の仕事を成し遂げた各部隊に、その先のステップを意識させ、次なる目標を示すのも経営者の役目だ。

ただし、数字や指標を示すだけでパフォーマンスが向上するほど経営者は簡単ではない。
目標設定は、「外発」と「内発」の2種に分けることができる。外発とは、経営陣が示す目標設定のこと。組織の命令系統の中から生まれる目標だ。売り上げや利益率を上げる、来場者数を増やすといったことも外発に含まれる。こうした目標設定はカンフル剤として有効だ。

一方の内発とは、スタッフの心の中で生まれる心理的な要素だ。働く動機は、各人の心の中からも生まれなければならない。例えば、仕事に意義を感じること、楽しく取組んでいること、好きという気持ちを持っていることなど。これらがパフォーマンスを生むエネルギーになる。さらに言えば、「楽しい」「好き」という気持ちをもって働く方が、健康にも良い。その分、発揮できるパフォーマンスも大きくなる。つまり、重要なのは外発と内発のバランス。外発の目標だけでは継続的な成長が見込めない。しかし、内発の動機付けだけでも、具体的な目標がなければエネルギーとして発揮できないのである。

ここで改めて、本題に戻ってみる。なぜ一流はいつも謙虚なのか。

謙虚さとは、高い視点と広い視野を持つことによって生まれる「まだまだ」という心理である。ならば経営者は、スタッフの視点を高め、視野を広げる役割を負う。目標を達成し、満足しているスタッフがいれば、外の世界と触れる機会を与え、新たな目標を示してやる。今の仕事のやり方に行き詰まりを感じているスタッフがいれば、他業種を見る機会を与え、異なった作法を探すきっかけを与える。こうした経営努力が、謙虚な心理状態を作り出し、企業を成長させていくのである。