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[連載] 第6回「いつでも実力を発揮できる人」
取締役COO 布施 努
これまで5回にわたり、心理面の管理によってパフォーマンスを高める方法を考えてきた。具体的には、成長を止めない視点の持ち方(第2回)や、効果的な目標設定方法(第3回)などだ。これらは比較的実践しやすく、効果も出やすい。
しかし、なかには、これらが習慣として身につかず、一時的なものにとどまってしまう人もいる。そこで今回は、「一時的」を「日常的」に変えるためのトレーニングについて考えてみたい。これを、「ライフスキルトレーニング」と呼ぶ。
ライフスキルとは、簡単に言えば、「生きる力」である。例えば、我々には、文明化とともに退化してしまった力がある。代表的なのが、集中力や注意力だ。原始時代では、命を守るために、常にエサに集中し、常に外敵に注意する必要があった。いまも人間はその力をDNAとして持っているが、現代では、常に集中し、常に注意している必要がなくなった。結果、集中力や注意力は、習慣から一時的に発揮するスキル(実力)に変わった。
視点の持ち方や目標設定方法なども、社内だけや仕事中にだけ実践するのであれば、それは一時的な実力に過ぎない。理想的なのは、「いつでも、どこでも」という感覚で、実践できること。つまり、スキルをライフスキルにすることだ。
「いつでも、どこでも」とは、どういう状態なのか。
1つのスポーツチームの例を挙げよう。ある時、球場のクリーン運動として、選手たちが掃除やゴミ拾いを行うことにした。当初は、指示を受けて行っていただけであった。しかし、そのうちに掃除やゴミ拾いをするのが当たり前な感覚になり、常に球場がきれいに保たれるようになった。
重要なのは、ここから先だ。やがて彼らは、練習中や球場内にいる時以外でも、掃除をし、ゴミを拾うようになった。時間や場所を問わず、ゴミが落ちている状況に疑問や不快感を抱くようになったためだ。これがつまり、「いつでも、どこでも」の感覚。スキルも、こういう状態に持っていくことが重要だ。
スキルをライフスキルに
進化させる6ステップ
ライフスキルトレーニングは、以下の6つのステップで行う。
- 心の存在を知る
まず、「心」の状態がパフォーマンスにどう影響するのかを、知る。例えば、気分が乗っている時と乗っていない時とでは、仕事の成果が異なる。心がパフォーマンスを左右するためだ。 - 心とは何かを知る
知識として、心が他人や環境の影響を受けるものであることを知る。感覚的に分かるのではなく、言葉で説明できなければならない。 - 心の価値を知る
メンタルトレーニングにおいて、成果が出せる人と出せない人との差は、ここで生じる。心というものに価値を感じることが重要だ。 - 心の状態を知る
自分の心がどういう状態にあるのかを知る。どんな心理の時にパフォーマンスが良く、どんな心理の時に悪いのかを知る。 - 心の状態を良くする方法を知る
心の状態をコントロールする方法を知る。方法が分かれば、実践することができる。つまり一時的な力として身につく。 - 「いつでも、どこでも」で実践する
最後は、「いつでも、どこでも」を意識して、実践する。ここで、スキルがライフスキルになる。ステップ5までは全て「知る」ことであり、「知識」として得ることである。しかし、知識は、忘れてしまえば実践できない。トレーニングを積み、ライフスキルに変えれば、忘れることがなく、常に実践できる。方法としては、前号で述べた通り、「くり返し」、「負荷」をかけてトレーニングしたり、状況に応じて「特異性」のある方法を選ぶ。無意識の状態で不足しているスキルを、意識し、トレーニングすることもできる。
例えば、「感謝」をライフスキルにするとしよう。これを6つのステップで考えると、以下のようになる。
- 感謝する心が、いかにパフォーマンスに影響するのかを知る。
- 感謝が、どんな状況で生まれるのかを知る。また、感謝が、仕事を進める上でも、生活を豊かにする上でも重要であることを知る。
- 感謝されれば、嬉しい。感謝すれば、相手も気持ちがいい。スタッフ間や接客において、感謝が価値のある心理であることを知る。
- 自分はどのような時に感謝され、どのような時に感謝の心が芽生えるのかを知る。
- 感謝を行動として示すためには、どのような方法があり、どのような方法が効果的なのかを知り、実践する。この時点で、意識している状態であれば、感謝を行動として示せるようになる。
- 「いつでも、どこでも」を意識する。例えば、忙しい時や心に何か不安がある状態でも感謝を行動として示すことができるか。仕事場以外ではどうか。お客以外の人に対してはどうか。日常生活全般において感謝の心を行動として示せるよう、トレーニングする。
ライフスキルトレーニングは、基本的に各自で取組むべきことである。自分でテーマを見つけ、6つのステップで取組み、身につける。
組織やグループで取組む場合には、まず6つのステップを理解させ、実際に、個々にテーマを設定させるのがいいだろう。
例えば、いまのゴルフ場に必要だと思うことを、3つ挙げてもらう。今シーズンの目標でもよいし、仕事のことに限定せず、スタッフ個人が自分に足りないと感じていることを3つ挙げてもらってもよい。
リーダーは、ここで挙がったテーマを、個々がライフスキルとして身につけるよう指示する。そのためのトレーニング方法を指示し、取組む様子を評価する。途中で挫折する人や、「いつでも、どこでも」で実践できないスタッフが出てきたら、その原因は、ステップ5で満足してしまい、ステップ6に届いていないためだ。その際、リーダーは、「スキルは忘れる。ライフスキルは忘れない」という点に留意し、さらにトレーニングを積むよう指示する。前述のクリーン運動の例のように、場所や時間を問わず、無意識に実践できるようになれば合格と言える。
QOL(quality of life/生活の質)という点でみても、ライフスキルトレーニングは重要と言えるだろう。QOLを高めるためには、収入や待遇といった表面的、物質的なことのほか、精神的な満足度が欠かせないからだ。ライフスキルトレーニングを通じて身につけたことは、自分の成長につながる。そこで生じる、「楽しい」「充実している」といった満足感が、個々のセルフイメージを大きくし、結果として、仕事のパフォーマンス向上につながるのである。




